ユーザー中心設計におけるアクセシビリティ: シナリオ
シナリオは、ワークフロー分析において作成されており、それは「アクセシビリティの分析」の章で説明しています。本セクションでは、下記に間する情報を提供します。
例の中で特にアクセシビリティに関連する箇所は、ハイライト表示すると同時に、スクリーン・リーダーのユーザーおよび画像が見えないその他のユーザーのために、「ハイライト開始」および「ハイライト終了」の代替テキスト(ALT
)を用いた透明な画像で囲んでいます。
背景: ユーザー中心設計(UCD)におけるシナリオ
シナリオは、UCDワークフロー分析において収集された情報に基づくものであり、大きく異なります。機能レベルに的を絞ったものもあれば、タスクレベルの詳細に的を絞ったものもあります。「ユースケース」は、多くの異なるものを意味するために使用されており、いくつかの種類のユースケースは、ここで使用するシナリオと非常に似ています。一般にハイレベルのシナリオは、新製品の分析段階で使用され、より詳細なシナリオは、新製品の設計の後の段階および既存の製品の再設計で使用されます。
ペルソナがユーザーグループのプロフィールデータの個々の仮想的な説明であるのと同じように、シナリオはワークフローデータの個々の仮想的な説明です。シナリオは、あるペルソナがある目標を達成するために製品を使用する場合の説明です[1]。通常、シナリオは、ナレーションであり、特定の状況における1つまたは複数のタスクについて説明しています。
シナリオの作成では、実世界における製品の使用に関して通常であれば発見されず考慮されない重要な側面を測定します。たとえば、ワークフローは、電話の着信により中断する可能性があります。シナリオは、設計プロセス全体、特にユーザビリティ・テストのタスクの説明を作成する上で役に立ちます。
シナリオでは、ハイレベルの製品の使用をカバーすることもできれば、製品の細かい使用に的を絞ることもできます。特定のユーザーおよび製品の細かい使用を含む詳細なシナリオは、たとえば次のように開始することができます。
シナリオ#1: 従業員の役職名の変更
人材スペシャリストであるHanna Reed-Smithは、Josh Andersonの役職名をパーソナル・ライン・アナリストからパーソナル・ライン・マネージャーへ変更するためのeメールを受信します。
アクション:彼女は、HRWebを開いて、「従業員の検索」をクリックします。次に、タスクバーのボタンを使用してeメールに戻り、Joshの社員番号を入手します。彼女は、マウスを使って番号をハイライト表示し、それをコピーし、HRWebへ戻って、従業員番号フィールドに貼り付け、検索ボタンをクリックします。彼女が、「従業員情報」をクリックした時点で、電話が鳴ります。
- Hanna:
- 人事部Hannaです。
- 電話の相手:
- 前月の給与明細に、休暇の時間にミスがあることが分かったのですが。
- Hanna:
- 分かりました、対応します。
アクセシビリティを考慮したシナリオ
アクセシビリティを考慮したシナリオでは、条件を制限されたペルソナが、支援技術を含め、適応手段を使用して製品をどのように扱うかに関して詳細を示します。通常、シナリオ作成者は、限られた条件の下で製品を扱う方法がどのように異なるかを理解するために、数人の障害者が製品の旧バージョンあるいは他の同様の製品をどのように使用するかを観察します。
われわれは、多くの人がソフトウェアを自らセットアップしないことがわかりました。通常は、支援技術のスペシャリストが、障害のある人のためにソフトウェアをセットアップしています。高齢者の場合では、本人の子供がソフトウェアをセットアップしてあげるのが一般的でした。したがって、セットアップワークフローには、第3者を含めています。
「分析段階」の章の「個々人の違い」で説明したように、障害者には多様性があることを示すメモを含めると、設計者がユーザーによる多様性を思い出すために役に立ちます。1つの例を下記に示します。
人はひとりひとりが違うということを忘れないでください。障害のあるユーザーを含め、すべてのユーザーが、製品を同じ方法で使用していると思い込まないでください。人によって、使用する対話のテクニック、適応手段、そして支援技術の形態は異なります。また、体験、期待、そして嗜好も異なります。このシナリオは、このユーザーグループの1ユーザーの例にしか過ぎません。
下記の例は、上記と同じシナリオですが、アクセシビリティが考慮されています。
シナリオ#1: 従業員の役職名の変更
人材スペシャリストであるHanna Reed-Smithは、Josh Andersonの役職名をパーソナル・ライン・アナリストからパーソナル・ライン・マネージャーへ変更するためのeメールを受信します。彼女のスクリーン・リーダーは、毎朝彼女がコンピュータを起動すると同時に開き、それからずっと稼動し続けています。
アクション: 彼女は、HRWebを開き、「従業員の検索」へタブで進みます。次に、Alt+Tabキーを使用してeメールに戻り、Joshの社員番号を入手します。彼女は、キーボードを使って番号をハイライト表示し、それをコピーし、HRWebへ戻って、社員番号フィールドに貼り付け、Enterキーを押して、検索を開始します。スクリーン・リーダーの使用中に、Tabキーを押してリンクを素早くジャンプし(各リンクテキストの冒頭だけを聞いて、テキストは聞きません)、社員情報を選んだ時点で、電話が鳴ります。Hannaは、スクリーン・リーダーを停止するためのキーを押し、電話に出ます。
- Hanna:
- 人事部Hannaです。
- 電話の相手:
- 前月の給与明細に、休暇の時間にミスがあることが分かったのですが。
- Hanna:
- 分かりました、対応します。
シナリオの詳細な例
次の「シナリオ例」のセクションでは、アクセシビリティが考慮されているシナリオの詳細な例をさらに示します。
参考文献
- Cooper, A. The Inmates Are Running the Asylum. Indianapolis, Indiana: SAMS, Division of MacMillan Computer Publishing, 1999.
本セクションの一部の情報は、下記の文献として既に出版されています。
- Henry, S.L., Martinson, M.L., and Barnicle, K. Beyond Video: Accessibility Profiles, Personas, and Scenarios Up Close and Personal. Proceedings of UPA 2003 (Usability Professionals' Association annual conference), 2003.