ユーザー中心設計におけるアクセシビリティ: ペルソナ
ペルソナは、ユーザー分析中に作成されており、それに関しては「アクセシビリティの分析」の章で説明しています。本セクションでは下記の情報を提供しています。
例の中で特にアクセシビリティに関連する箇所は、ハイライト表示すると同時に、スクリーン・リーダーのユーザーおよび画像が見えないその他のユーザーのために、「ハイライト開始」および「ハイライト終了」の代替テキスト(ALT
)を用いた透明な画像で囲んでいます。
背景: ユーザー中心設計(UCD)におけるペルソナ
ペルソナは、実際の典型的なユーザーを仮定しています。実際に存在する人ではありませんが、設計プロセスにおける実際の人を代表しています[1]。ペルソナは、仮想的なユーザーを表しています。
ペルソナの目的は、ユーザーにより真実味を持たせ、設計プロセス全体を通して設計者にユーザーの現実的な姿を示すことにあります。ペルソナには固有の名前があり(通常は、覚えやすいもので、ユーザーグループ名に関連しています。たとえば、人材スペシャリスト(Human Resources Specialist)のHanna Reed-Smithなど)、図と共に示されます。設計者および評価者は、具体的な設計を考慮する場合に、ペルソナについて言及します。たとえば、「Hannaは、新しい従業員を追加するためにはこのボタンをクリックするということを知っていますか」などと言ったりします。設計判断においてユーザーを重視してもらうために、ペルソナによって、ユーザーに名前、顔、特徴が与えられます。
ペルソナには、特定のハードウェアおよびソフトウェア構成など、ユーザープロフィールに基づく特定の特徴、人口統計データ、体験度などが含まれます。ペルソナに関する追加情報としては、行動、態度、モチベーション、目標などの個人的な詳細情報があります。
ユーザーグループのプロフィールは、特徴を一通り網羅しています。つまり、ペルソナでは具体的な詳細を用います。ペルソナが具体的であればあるほど、設計ツールとしてさらに効果的になります。
[1] たとえば、「Joshuaは、週に1度ATMを利用します」と言う代わりに、「Joshuaは、毎週金曜日、職場から自宅に帰る途中、食事のテイクアウトとレンタルビデオ料金の支払いのための現金を下ろすのに、ATMを使用します」と言います。
通常、ペルソナには、1つの章から1ページにわたるまでの文章、そして本人の画像としてスケッチ、雑誌の切り抜き、あるいは写真素材などが含まれます。設計室にペルソナの大きなポスターを貼ることは、設計活動においてペルソナを重視する上で役に立ちます。
1つの例として、人材スペシャリストHanna Reed-Smithのペルソナには、年齢、使用頻度、Web体験などのユーザープロフィール・データに加え、下記に示す詳細情報が含まれます。
Hannaは、会社で昇進を続けています。現在の人事マネージャーは3年後に引退するのですが、その跡を引き継ぐことが目標です。Hannaは、仕事が早く、効率的かつ正確であることを誇りにしています。彼女は、同僚と比較していかに多くの取引が成立したかを示す月末報告に、自分の評判を掛けています。
Hannaは、仕事と家庭の両立に苦労しています。彼女は、子供と過ごせるように、火曜日と木曜日は在宅勤務しています。彼女の自宅のコンピュータは、職場のコンピュータよりもずっと古いもので速度も遅く、彼女は自宅で仕事するときは力が発揮できないと感じていらいらしています。
Hannaは、トップに登りつめるためのツールとして、コンピュータは役に立ち、(大方)楽しいものであると捉えています。彼女は、休日が近づくとディスプレイの色を変更します。Hannaは、コンピュータの使用について1つの大きなこだわりがあります。誰かに助けを求めることが嫌いなのです。彼女は、やり方を知らないことを認めることはなく、何でも自分で解決しようとして多くの時間を費やしています。
アクセシビリティを考慮したペルソナ
障害のあるペルソナには、共通した特定の特徴、人口統計データ、経験度、および上記の個人的な詳細事項が含まれます。アクセシビリティが考慮されているペルソナには、限られた条件(障害あるいは状況による制限)、および下記に示す製品の使用における適応手段に関する説明も含まれます。
- 制限の特徴(たとえば、目が見えない、マウスが使えない、騒音のある環境での操作など)
- 使用している特殊なツールまたは支援技術(たとえば、16ポイントよりも小さい文字を見るために拡大鏡を使用している、スクリーン・リーダーを使用している、携帯電話での会話を聞こえるようにするために機械を止めるなど)
- 関連するツールや支援技術の経験度およびスキル
- 関連するツールや支援技術の使用頻度
Hanna Reed-Smithとして現れるペルソナは、彼女の障害および彼女が使用する支援技術に関する情報を追加することにより、アクセシビリティに重点を置くことができます。ペルソナに関して、アクセシビリティに重点を置いた情報の追加の例を書きに示します。
Hannaは、会社で昇進を続けています。現在の人事マネージャーは3年後に引退するのですが、その跡を引き継ぐことが目標です。Hannaは、仕事が早く、効率的かつ正確であることを誇りにしています。彼女は、同僚と比較していかに多くの取引が成立したかを示す月末報告に、自分の評判を掛けています。
Hannaは、生まれつき目が見えないため、コンピュータを使用するときはスクリーン・リーダーを使用しています。彼女は、過去5年間、スクリーン・リーダーとしてJAWSを使用してきました。ハンナは、JAWSのキーのさまざまな組み合わせをマスターするために懸命に努力し、素早く正確に使用できるようになったことを誇りにしています。
ハンナは、仕事と家庭の両立に苦労しています。彼女は、子供と過ごせるように、火曜日と木曜日は在宅勤務しています。彼女の自宅のコンピュータは、職場のコンピュータよりもずっと古いもので速度も遅く、彼女は自宅で仕事するときは力が発揮できないと感じていらいらしています。
ハンナの自宅のコンピュータには、JAWSの旧バージョンが導入されています。彼女は、職場にあるJAWSの新しいバージョンでしか使用できないキーの組み合わせを自宅で使用しようと試みています。その結果、何度も同じ操作を繰り返し行っています。彼女は点字が読めますが、リフレッシュ可能な点字ディスプレイは職場でも自宅でも使用していません。
Hannaは、他のJAWSユーザーとeメールをやり取りすることが好きです。彼女は、ネットフレンドからヒントや方策を学び、各人が独自の設定を行い、JAWSを多少異なる形で使用していることを発見しました。
Hannaは、トップに登りつめるためのツールとして、コンピュータは役に立ち、(大方)楽しいものであると捉えています。彼女は、休日が近づくとディスプレイの色を変更します。Hannaは、コンピュータの使用について1つの大きなこだわりがあります。誰かに助けを求めることが嫌いなのです。彼女は、やり方を知らないことを認めることはなく、何でも自分で解決しようとして多くの時間を費やしています。
個々人の違いの考慮
障害者は、「分析段階」の章の「個々人の違い」で説明したように、それぞれ非常に異なります。しかし、設計者は、障害のあるペルソナ1人から得る情報がすべての障害者に当てはまるという考え方に陥る傾向にあります。設計者が、多様性を理解するためには、多くの異なるさまざまな障害を持つ人がどのように製品を使用しているかを観察することが理想的です。設計者と障害者との対話が少なければ少ないほど、設計者はその分ユーザー間の多様性を念頭に置くことが重要です。ペルソナに、障害者間の多様性に関するメモを含めることも、上で述べたようなわなに陥るのを回避するのに役に立ちます。1つの例を下記に示します。
人はひとりひとりが違うということを忘れないでください。障害のあるユーザーを含め、すべてのユーザーが、製品を同じ方法で使用していると思い込まないでください。人によって、使用する対話のテクニック、適応手段、そして支援技術の形態は異なります。また、体験、期待、そして嗜好も異なります。このペルソナは、このユーザーグループの1ユーザーの例にしか過ぎません。
ペルソナの詳細な例
次の「ペルソナの例」のセクションでは、アクセシビリティが考慮されているペルソナの詳しい例を示します。
参考文献
- Cooper, A. The Inmates Are Running the Asylum. Indianapolis, Indiana: SAMS, Division of MacMillan Computer Publishing, 1999.
本セクションの一部の情報は、下記の文献として既に出版されています。
- Henry, S.L., Martinson, M.L., and Barnicle, K. Beyond Video: Accessibility Profiles, Personas, and Scenarios Up Close and Personal. Proceedings of UPA 2003 (Usability Professionals' Association annual conference), 2003.