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Just Ask: デザインプロセスを通じて取り組むアクセシビリティ

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ユーザー中心設計におけるアクセシビリティ: 分析

はじめに

ほとんどのユーザー中心設計プロセスの第1段階は分析です。「背景」の章では、設計段階のステップをリストし、それがユーザー中心設計(UCD)プロセスにどのようにフィットするかを示しています。本章ではUCD分析の下記の側面に関する情報を提供しています。

アクセシビリティを分析段階に含める場合の詳細情報に関しては下記のセクションを参照してください。

アクセシビリティの問題の理解

分析のためのユーザー中心設計テクニックには、インタビュー、現地調査、およびフォーカスグループを使用して、対象ユーザーおよびそのユーザーの製品の使い方に関して学ぶことが含まれます。これらのテクニックは、障害者、および製品に関するアクセシビリティの問題を理解する上でも使用することができます。

障害者によるプロジェクトへの参加」および「ユーザビリティ・テスト」の章におけるほとんどのガイダンスは、障害者の分析段階への参加に適用されます。

われわれのユーザビリティスペシャリストの1人が、視覚障害者であるコンピュータユーザーのグループに加わりました。そして、それは双方にって有益であることが分かりました。われわれは、アクセシビリティの問題に関して学び、ソフトウェアをより使いやすくするためにユーザビリティ・テスト参加者をリクルートすることができ、すべてのソフトウェアに応用できるヒントおよび方策を共有することができるようになりました。

個々人の違い

障害者は、他のユーザーと同様にひとりひとり異なります。多種多様な背景を持ち、興味、好き嫌い、目標、そしてスキルもさまざまです。過去の体験も、期待も、嗜好も異なります。また使用している対話のテクニック、適応手段、支援技術の形態も異なります。

1人の障害者からのフィードバックが、すべての障害者に当てはまると思い込まないように注意してください。1人の障害者が、同じ障害を持つ他の人がどのように製品を使用しているかを知っているとは限らず、その他のアクセシビリティの問題に関する有効なガイダンスを提供できるほど他の障害に関して知っているとは限りません。1人のユーザーからのフィードバックに基づいて設計の判断を下さないようにし、それと同じく、1人の障害者が推奨することに基づいてアクセシビリティの判断を下さないでください。1人の障害者に役立つことことが、同じ障害者を持つ人、あるいは異なる障害を持つ人にとって有益でないこともあるのです。

ユーザビリティの目標の設定

ユーザビリティの目標あるいはユーザビリティの目的は、分析段階で定義された製品のユーザビリティが目指すターゲットであり、通常はユーザビリティ・テストにより測定されます。ユーザビリティの目標には、期限どおりのタスク完了、エラー数、完成率、成功率など、測定可能な行動および特定の基準が含まれます。ユーザビリティの目標の例があります。それは、人事のスペシャリストであれば、HRWebを初めて2回使用してみて、その1分間おいた後に、サポートやマニュアルなしで新入社員の記録を3分以内に作成できなければならない、といったことです。

ほとんどのユーザビリティの目標は、障害に関係なくすべてのユーザーに対して同じでなければなりません。下記に示すように、状況によっては、障害のあるユーザーに対して、いくつかのユーザビリティの目標(すべてではありません)を修正してもよい場合もあります。

新製品と使い慣れた製品の使用

多くのユーザビリティの目標およびユーザビリティ・テストでは、新製品のユーザーに重点が置かれています。つまり、初めて使用する場合にタスクを期限通りに完了できるか、ということに重点が置かれています。ユーザビリティの目標の中には、障害のある一部のユーザーに対しては異なることもあります。というのは、障害のあるユーザーが新製品を使用する場合には、作業が遅くなることがあるからです。しかし、製品に慣れれば障害のないユーザーと同じくらい早く、あるいはもっと短時間でタスクを完了できるようになるかもしれません。

頻繁に使用される製品やタスクに関しては、初回使用時に効率的に使えることがそれほど重要でないと判断し、ユーザビリティの目標を、ユーザーが製品に慣れた後の期限どおりのタスク管理に変更することもできます。たとえば、ユーザビリティの目標における時間的条件を「ユーザーが最初に製品を使用した時」から「ユーザーが製品を2日間使用した後」に変更することができます。

重大なタスクと重大でないタスクに対するユーザビリティの目標

状況およびタスクによってはユーザビリティの目標を緩和しても大丈夫ですが、重大なタスクに関しては、障害者が効率的かつ効果的にタスクを完了できることが重要です。たとえば、主要なツールとして1日中仕事で使用する製品は、職務の履行において誰も不利にならないように、全従業員に対して効率的である必要があります。また、誰に対しても同様に提供されるべきタスクのもう1つの例として、短縮ダイヤルを作動させるタスクなど、条件が限られていても間違えないで素早く電話をかける必要がある緊急時の通報の電話などがあります。

ユーザビリティの目標を納得できる範囲で変更したい場合、たとえば、次のようにタスクの重要性と頻度を考慮してください。

  1. 中核となる主要な機能
  2. 補助的かつ二次的な機能
  3. 頻繁なメンテナンス(電池交換など)
  4. 初期設定およびインストール
  5. 定期的なメンテナンスや修理

通常、中核となる主要な機能の場合、障害者が同じユーザビリティの目標を達成することが重要となりますが、定期的なメンテナンスや修理の場合では、それはさほど重要ではありません。

ユーザー分析

ユーザー中心設計(UCD)の分析段階の主要な要素は、誰が製品を使用するかに関する詳細なユーザー分析です。ユーザー分析では、同様の製品に関する知識や体験や、環境、使用頻度、そして製品の種類によってはハードウェア、ソフトウェア、支援技術など、ユーザー特性を見極め、定義します。

他人を考慮に入れるプロセスが正式に存在しない場合は、自分たちのために設計しがちなものです。したがって、多くの製品は、設計者自身の嗜好、能力、そして環境に基づいて設計されています。障害者にニーズを考慮した製品の設計は、今でもあまり見られません。その結果、さまざまな能力の違いや障害がある人のニーズを設計段階で考慮した場合と比べて、製品を使用できるユーザーの範囲、および製品を使用できる状況が限られてしまいます。

特定のユーザー分析が行われる場合でも、考慮されるユーザーの範囲が限定されてしまっていることがよくあります。設計者は、主として認識不足により、ユーザー分析に障害者や通常とは異なる状況で使う人を除外してしまう傾向にあります。

ユーザー分析にアクセシビリティへの配慮を含める場合のガイダンスは、下記のセクションで提供しています。

ワークフロー分析

ワークフロー分析では、ユーザーのタスクプロセスを定義します。ワークフロー図には、タスクを完了するまでのステップ、特定のステップを実行するユーザーの役割、製品が関係する特定の場所が示されていて、製品設計の評価に使用されます。ワークフロー図は、通常はフローチャートですが、ユーザーのタスクをモデル化する1つの方法に過ぎません。テキストフォーマットでタスクプロセスを捉えるもう1つのツールとして、シナリオがあります。

アクセシビリティをワークフロー分析に含める場合、タスクを完了するために用いる適応戦略をワークフロー図およびシナリオに確実に含めるために、障害者が製品あるいは同様の製品を使用しているところを観察してください。

ワークフロー分析にアクセシビリティへの配慮を含める場合のガイダンスは、下記のセクションで提供しています。

参考文献

本章の一部の情報は、下記の文献として既に出版されています。


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